投稿者「exp-th_hasegawa」のアーカイブ

【最終回】バンコクよりお別れのご挨拶

掲載回数89回。およそ3年半という歳月にわたり、ここでタイのことを書かせていただいた。本業の合間を縫っての執筆である。時には締め切りに追われることもあった。しかし、苦痛に思ったことは一度もない。むしろ楽しませて頂いた感のほうが強い気がする。書き手が楽しみながら書かなければ、読者だって楽しく読むことはできないだろう。そう信じていたからだ。それは、うぬぼれかもしれない。しかし、そんなうぬぼれた自分をいつも支えてくれた人がいた。この原稿の最初の読者であり、編集者のH氏だ。彼が書き添えてくれる解説文には自分が書ききれなかったことが、歯切れよく書き込まれていることが多かった。さすがだと思った。そして原稿拝受の返信にはいつも心温まる言葉が添えられている。その言葉にどれだけ助けられ、励まされたことか……。彼の存在があったこと、そして毎回読んでいただける読者の皆さんがいたこと。だからこそ、89回まで続けられたのだ。そして続けてきて本当に良かったと思っている。心から感謝申し上げたい。

事情により原稿は前号を最終の号とさせていただいた。いつか、また掲載を再開する日がくるかもしれない。その時は懲りずにまたページを開いて頂ければと思う。

長年のご愛読、本当にありがとうございました。         中村 蒸一 拝

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タイで日本居酒屋<寅次郎><どんたく 九州酒場>を展開する、なえぎ(タイランド)株式会社代表。 詳しくはこちらをクリック! インタビュー「熱い思いで本物の日本居酒屋をタイに根付かせる!」

タイ人が日本で感じた
3つのワンダー

毎年恒例の社員旅行。雪の北海道に次いで人気があるのが桜、そう花見のツアーだ。今回は4月23日より東北の三大桜を巡るツアーに5人で参加してきた。果たしで桜は見ることができるのか? 東京に着いて葉桜を見たタイ人たちは、かなり不安そうだった。しかし、いざ東北へ着くと、どの名所も桜が満開だった。山桜に、ソメイヨシノ、そしてしだれ桜などなど。これまで何度となく花見のツアーに参加しているが、今回が最高のタイミングだったと思う。ちなみに参加したタイ人スタッフが一番素晴らしかったと口を揃えたのが弘前城の桜である。北上展勝地や角館の桜も悪くはないが、やはりお城と桜の組み合わせがタイ人には印象的だったのだろう。

5日間という短い間であったが、桜以外にも彼らがびっくりしたことを3つ挙げてみる。

1番目は、どこにでも自販機があること。そして、その自販機で売られている商品の種類が多いことにも彼らは驚いたらしい。さらに、電子マネーで買える自販機には感動さえもしてくれた。確かにタイには自販機がほとんどない。あっても硬貨しか使えない自販機だったりする。なるほどな!と思った。

2番目に彼らがびっくりしてくれたのが、日本の電柱が丸いことだ。日本人としては当たり前すぎる事で、何でと思うかもしれない。しかし、タイには丸い電柱がない。タイの電柱はすべて四角なのである。なぜタイの電柱が四角なのか、その理由は分からない。でも、日本の電柱が丸いのは、地面を掘削する時のドリルが丸なので、それに合わせ丸くしたと何かの本で読んだ記憶がある。

そして、最後の彼らの驚きは眼鏡である。なぜ日本人は、こんなにも眼鏡を掛けている人が多いのか? 人によってはお洒落で眼鏡をかけている人もいるだろう。しかし、タイ人に比べて日本人は眼鏡を掛けている人が圧倒的に多いのは事実だ。

ただこの最後の驚きは、実は自分にとっても、タイで驚いたことであり、疑問に思っていた事の裏返しだった。

つまり、なぜタイ人は目が良い人ばかりなのに、眼鏡屋がタイにはこんなにも多いのか? これは驚きでもあり疑問でもある。大通りやショッピングモールには必ず眼鏡屋がある。そしてさらに不思議なのは店員さんが女性ばかりで、綺麗どころばかりなのだ。サングラスや老眼鏡は道端の屋台でも買う事ができるタイ。この国で眼鏡屋はどう商売を成り立たせているのか? 余計なお世話かもしれないが、いち商売人としては、やはり気になるのだ。

 

 

 

 

 

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取締りがより厳しくなった
バンコクの交通法規

先の見えない渋滞。逆走してくるバイク。どんどん割りこむ車。車間距離を取らないタクシー。右折しようにも延々と続く中央分離帯。バンコクで車を運転するのは本当に大変だ。他の車との闘いというよりは、ストレスとの闘いである。なのでバンコクには、バンコクなりの運転の流儀がある。日本とは全く違う感覚でハンドルを握る必要があるのだ。日本からいきなり来てバンコクで車の運転するのは無謀かもしれない。私も慣れるまで5年は掛った気がする。

 

そんなタイだが、交通法規はどんどん厳しくなってきている。増え続ける交通事故に対し、政府にも危機感がないわけじゃない。先月からは何と車の後部座席もシートベルト着用が義務づけられた。運転中の携帯電話の使用やバイクの歩道走行も今年に入って取り締まりが強化されている。これは良いことだと思う。

 

 

また日本のオービスの様なカメラによる取り締まりもバンコクの主要交差点では行われている。実は、ある日、突然違反切符が自宅へ届いてびっくりした経験が自分にもある。切符には、『9月13日午後9時42分14秒、黄色信号に変わって2秒後に交差点に侵入。これは危険侵入罪に当たるので罰金500バーツを納めること』。簡単にまとめるとこんなことが書いてあった。そしてご丁寧にカラーで証拠の写真も印刷されている。これでは全く言い逃れができない。タイの交通取り締まりもここまで来たのかと、かなり驚いた。

さて、タイの場合、運転免許の交付や更新、そして自動車税などの徴収業務を行うのは陸運局である。警察ではない。これは日本と大きく違うところだと思う。そして、運転免許証だが、普通自動車の免許証とバイクの免許証はそれぞれ別になっている。両方の免許を持つ人は2枚、免許証を持つ必要があるのだ。これはめんどうだなと思ったが、タイ人的には問題ないらしい。

また交通違反で捕まると免許証を没収され、取り締まった所轄の警察署へ出向き罰金を納める必要がある。罰金を納めると免許証を返してくれるのがタイのシステムなのだ。罰金を納めるまでは違反切符が免許証がわりになる。だからタクシーの運転手には違反切符で期限ぎりぎりまで運転する人もいる。免許証がない限り、2重に違反切符を切られることがないからだ。これも彼らなりの知恵なのだろう。

ますます厳しくなる交通法規。でも、それよりも全然解決されない渋滞をなんとか解消して欲しい。個人的にはそう思う。

 

 

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仏教国タイならではの
「タンブン」一部始終

日本には六曜という暦注のひとつが生活に根付いている。結婚式なら大安が良いといわれ、仏滅を避ける人が多い。また友引の日には、葬式を行わない地域もまだまだ多いようだ。勝負事や事業のスタートは先勝の日が好まれるのもなんとなくわかる。縁起担ぎとはいえ、六曜は日本の文化であり、冠婚葬祭や行事ごととは密接に繋がっている。

ここタイには六曜のような暦を軸にした吉凶判断の文化はない。冠婚葬祭などの日取りを決めたり、判断してくれるのは占い師だったり、お寺のお坊さんであることが多い。

先月末に店舗の拡張工事が無事に終わり、いつから、そこの場所で営業をはじめるかを決めてくれたのはお坊さんだった。そして、営業はじめる前に、まずは仏壇を新しい店舗部分にもうけ、線香に火をつけお供え物をあげる。物や人を入れる前に、仏像から運び入れるのもタイならではの習慣だ。

 

それだけじゃない。営業をはじめた後も、良い日柄を選んで「タンブン」という儀式をする必要がある。タンブンとはお布施という意味だが、いろいろな意味で使われる言葉だ。この場合のタンブンは、日本の落成式のことで、お寺からお坊さんを呼んで行う。お呼びするお坊さんの人数は5名や9名の場合が多い。5や9がタイでは縁起の良い数字とされているからだ。ちなみに今回のタンブンは5人のお坊さんをお呼びして行った。

タンブンの開始時間は朝7時半。タイのお坊さんは正午から翌朝の日の出までは食事をすることができない。そんな理由からタンブンは午前中に行う必要があるのだ。

まずは30分ほどの読経から。それが終わると、従業員総出でお坊さんを食事でもてなす。食事の後に、再び10分ほどの読経が続く。最後は清水で店内や従業員を清めてもらい、お布施を渡すとタンブンは終わる。1時間半ほどの祭事だが、祭壇の設置や料理の準備は前日から従業員総出で行った。終わると本当にほっとする。職場の安全、平穏無事を祈念して行うタイの儀式、タンブン。お坊さんをお寺へ送り届けた後は、従業員一同で車座になって食事をする。食べるのはお坊さんをもてなした料理の残りだ。お坊さんが食べた後に食べるのがしきたりなのだとか。そして、それを食べることでご利益があるという。

しかし、そんなことより床に座り皆で食べる料理は普段の食事の何倍もおいしい。会話もはずむ。従業員との結束というか絆が深まった、そんなひと時だった。

 

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現代もタイ人の生活に
根付く精霊信仰

果たして今時の日本の子供たちはどんな言い伝えを親から聞き育っているのだろうか? スマホを操ればどんな情報でも手に入る時代である。そもそも言い伝えやジンクスを信じない、いや知らない子供たちが多いのではないだろうか? 私が子供だった時代は、「夜中に口笛を吹くな」とか「夜中に爪を切るな」などと真顔で親から叱られたものだ。生活の中に言い伝えが確かにあった。

さてここタイでは今もなお色々な言い伝えが人々の暮らしの中に根付いている。一番身近なものは、タイ人がニックネームを使うことでないだろうか。タイ人のニックネームは子供の頃に、親や親戚が付けてくれることが多いという。本名で子供の名前を呼ぶと、悪霊が子供を連れ去って行くので、本名ではなくニックネームで呼ぶようにしているのだとか。このタイ人のニックネームには豚や猫、鳥、バラなど動植物系が多いが、親切、意地悪、デブ、雨など変わったニックネームを持つ人もいる。また最近では、ビリーやベンツ、ジョンなどと横文字系のニックネームが多いのは時代の流れだろうか。個人的にはタイ人のニックネームには随分助けられた。なぜなら、タイ人の本名は難しい名前が多く、また発音も難しい。なかなか覚えられないので、ついついニックネームで呼んでしまう。実はタイ人でも同じなのではないだろうか。長年交流があるタイ人同士でも本名を知らないという場合もあるようだ。

このほかにも、水曜日は髪を切ると縁起がわるいとか、妊婦は悪霊から身を守るために安全ピンを服に着けるとか、色々な言い伝えがタイでは信じられている。でも、そんな言い伝えのほとんどが霊に対する信仰から来ているのがタイらしいところだと思う。

タイには宗教とは別に精霊信仰が根付いている。大きな木には霊が宿るとされ、色々なお供え物が供えられる。近所にある木には女性の霊が宿っているらしく、女性ものの服を供える人が絶えない。

また大きな家や建物の敷地内には、その土地の精霊を祀るサーン・プラ・プームが立てられ、そこに出入りする人は必ずこの祀柱に挨拶するのがタイでの常識なのである。またお供え物をしたりすると、ご利益があるとも言われている。このサーン・プラ・プームは日本の神棚の様な存在かもしれない。また、建物の入口に赤い棚を置き家霊を祭る家もある。これは、どちらかと言うと中国からきた文化だろうか?

宗教以外の信仰。タイと日本の大きな違いは神を崇めるのか、霊を崇めるのかの違いだ。

日本は神の国。そしてタイは霊の国。そこが分かると、タイの違った一面が見えてくる。

 

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携帯電話の番号も
悲喜こもごも

 実は携帯電話の番号を3つ持っている。いま時だと、決して珍しい話じゃないかもしれない。

一つ目の番号は15年以上も使い続けている番号で、081という3桁の数字からはじまる番号だ。この081という番号は、もともと01という元祖携帯電話識別番号だった。しかし、携帯電話の利用者が増え続け、番号が足りなくなり、0と1の間に8を入れることで、タイの携帯電話会社は最初の番号不足危機を解消させたのだ。だから081からはじまる携帯番号を持っている人はスマートフォン以前からの加入者、携帯電話元祖加入者ということになる。ある意味希少価値のある番号かもしれない。今では嘘のような話だが、携帯電話を持つのに多額の加入費用が掛かり、携帯電話自体も高価で贅沢品だった時代の番号なのだ。

 2つ目の番号は日本の携帯電話番号である。タイの携帯電話番号を日本でローミングして使うことも可能ではある。しかし、実際に使うと思いのほか高く思いがけない出費になる場合が多い。そこで2年前より、基本料金が定額980円というMVNO系格安携帯電話会社に加入し、日本の携帯電話番号をもつようにしたのである。日本では何かにつけて携帯電話の番号を聞かれることが多い。日本出張が多い自分にとっては、日本の携帯電話番号はなくてはならない存在なのだ。

 最後の3つ目の番号。これは厄除け、縁起担ぎ、あるいはお守り代わりに持っている番号だ。嫁さんが、普段タイで使っている081からはじまる番号が良い番号でないから、この番号に変えろと言って用意してくれた番号なのである。タイには姓名判断のように、携帯電話番号運勢判断というのがあり、自分にあった携帯電話番号を判断してくれる易者、占い師のような人がいるのだ。また携帯電話番号運勢判断専門の書籍もでているほどである。そんな携帯電話運勢判断に凝り始めた嫁さんによると、私が10年以上も使い続けている番号は非常によくない番号らしいのだ。「思いがけない支出が続き、お金が貯まりにくい。常に金策に追われ、やり繰りに悩まされることになる」なんとも忌まわしい判断ではないか。しかし、そうだからといって簡単に番号を変えるわけにはいかない。何より携帯の番号を変えるだけで、運命が一転するのなら誰も苦労はしないだろうよ。そんな冷めた思いもある。でも、嫁さんの気遣いをむげにするのも忍びない。なので、この3つ目の番号はタブレットにいれることにした。使うのは嫁さんへ連絡を取るときだけ。夫婦の絆を維持するための専用番号。まさに厄除け、縁起担ぎ、そしてお守り代わりの番号なのだ。

携帯電話ショップの店頭でも縁起のいい番号はプレミア価格がついています。

 

なんと、携帯電話の番号の持つ運勢を判断するための書物も存在するのです。

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バンコクのど真ん中で
椀子そばバトル開催!

やっと終わった・・・・・・。その安堵感は、今じわり、じわりと、何とかやり遂げた達成感に変わろうとしている。2月10日から12日までバンコク中心部、セントラルワールドで開催された『ジャパンエキスポタイランド2017』。このイベントに裏方として3日間参加してきたのだ。当初、イベント参加への話をいただいた時には断ろうと思っていた。毎日が通常の業務をこなすだけで精一杯だし、人手の余裕もない。しかし、「アジア最大級の日本文化の祭典を、どうか支えて欲しい」というひと言を聞いて断ることはできなかった。日本に興味を持ち、日本が大好きなタイの人たちが心待ちにしている年1回のビッグ・イベントである。そのイベントを少しでも盛り上げることができたら・・・・・・。

引き受けた業務はイベント敷地内でブースを開設する岩手県の支援だった。なかでも一番の任務は11日に特設ステージで行われる椀子そば大会の裏方である。大会で使う椀子そばはもちろん、機材やスタッフまで用意しなくてはならない。いくら一杯ごとのそばの量は少ないとはいえ、1200杯の椀子そばを用意するのは本当に骨が折れた。大会開始までの時間を逆算してそばを茹でる。そしてスタッフ総出で椀子そばへ仕立てた。果たして椀子そば競争みたいな、日本でもマイナーなイベントがタイ人に受けるのか? 正直、そんな不安がないわけでもなかった。しかし、いざステージでイベントがはじまると、それは全く杞憂に終わる。ステージに上がったタイ人の挑戦者たちは真剣そのもの。ステージはもちろん、観客席も大いに盛り上がり、大会が終わっても参加したいという人が次々と押しかけ、実行員会は嬉しい悲鳴をあげていたのだ。これには本当に驚いた。きっとタイの人たちは参加、実体験型の日本のアクティビティーに飢えていたのだろう。

今年で三回目の開催となったジャパンエキスポには3日間で約60万人の人が訪れたようだ。特設ステージにはAKB48やピコ太郎さん、ダンプ松本さんなど数多くの有名人が日本から駆け付け会場を盛り上げていた。

ステージ以外では、飲食ブースや物販ブース、また観光ブースと色々なブースが設けられ、時間帯によっては歩くのも困難なぐらいの混雑だった。そんな会場内でタイ人から注目を浴びていたのが日本の着ぐるみ。いわゆる「ゆるキャラ」である。実は岩手県のゆるキャラ『とうふっち』の中にはうちの会社のスタッフが入っていた。もし人手が足りなければ自分が入ろうと覚悟していたのだ。しかし、幸か不幸か入ることなくイベントは終了。あぁ、一度入っておけばよかった。今となって変な後悔をしている自分が今ここにいる。

 

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街が真っ赤に彩られる
春節がやって来た

春節の飾り

やっと正月気分が抜けて、普段通りの調子を取り戻してきたかな。そう思っていた途端に、今年は春節がやって来た。なんとなく、調子を狂わされる。春節は旧暦のお正月なので、毎年どの日になるかは決まっていない。今年は早めの1月28日が元日のようだ。中華系の企業では1月27日から2月2日まで休みになるところが多い。但し、国の祝祭日ではないので公共機関、一般企業などは普段通りである。東南アジアでは、韓国、北朝鮮、ベトナム、シンガポール、マレーシア、インドネシア、モンゴル、そしてブルネイも春節は国の祝祭日なのだとか。タイと日本だけがちょっと例外のようだ。いや、タイにはソンクランというタイの正月があるから、春節を祝祭日にすると休みだらけになってしまう。だから春節は敢えて祭日ではないのかもしれない。それでも、華僑の人たちは、しっかりと春節の間は休む。そして、とことん春節を祝う。春節が近くなり、軒先に赤色や金色の正月飾りが飾られているのを見て、はじめてここの家が中華系だったのかと気づかされることがある。タイの中華系の人たちは、かなり同化が進んでいて、中国語を全く話せない人も多い。そして、彼らのほとんどは中華系というよりもタイ人としての意識が強いのだ。だから、春節になってはじめて彼らの先祖が中華系だと知ることになるのである。中には中国語名を持ち、華人としての矜持を持っているタイ人もいなくはないが。あのタクシン首相がそうだった。

さて、この原稿を書いている1月27日は春節の前日で大晦日。街中では大掃除に精を出している中華系の人たちをたくさん見かけた。大晦日に大掃除をすると厄災が祓われると信じられているからだ。逆に元日は掃除や洗濯などをせず、のんびりと過ごすのが本来の春節だと聞く。新年にお皿などを割ったりすると縁起が良くないと料理もしない。昔は日本のおせちように前もって用意した料理を正月は食べていたらしい。最近はスーパーなどで買ってきたお正月用のお惣菜を食べたり、外食に出かけたりする家庭が多いようだ。

獅子舞が街を練り歩いたり、アンパオ(紅包)と呼ばれるお年玉が配られたり。タイの春節を見ていると、なんとなく日本の正月に近い気がする。しかし、真っ赤な飾りだけは、やっぱり中国ならではだと思う。

バンコクのデパートでは春節の期間中、中国本土から訪れる観光客向けのブース作りが急ピッチで進められていた。日本だけでなく、中国も今や正月には海外旅行というのが主流になってきているようだ。

タイのお年玉袋

赤がまぶしい、春節に配られるお年玉袋、アンパオ(紅包)

春節用品の特別ブース

ショッピングセンターには、春節用品の特別ブースが設置

 

 

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食べたいものを食べたいだけ
タイ人も大好き「食べ放題」

タイスキ

毎年恒例の日本慰安旅行。今年もやっぱり北海道が一番人気だ。私の会社では勤続5年目のタイ人従業員を日本旅行へ招待している。いわゆる福利厚生の一環である。日本で本物の日本食を存分に味わってもらうこと。各地で日本のおもてなしに触れてもらうこと。市場やスーパーで並んでいる食材を見てもらうこと。慰安旅行とはいえ、実は遊びだけではない。ちょっとしたミッションも課している。時にはお取引先の酒蔵を訪ね、蔵見学をすることもある。大人の修学旅行気取りの旅を毎回楽しんでいるのだ。しかし、行き先と行く時期はできる限り、参加者の希望に合わせるようにしている。雪を見たことがないタイ人にとっては、やはり冬の北海道は魅力的なようだ。しかし、実は花より団子だったりもする。雪よりも冬の北海道の味覚が楽しみなのだ。実際、北海道旅行から戻った従業員が一番印象に残ったと口にするのがカニ食べ放題などのバイキング・ディナーだ。自分が食べたいものを、食べたいだけ食べられる。

しかも、旅先の日本でのことだ。見る喜びよりも、食べる喜び。そこに日本での旅行の思い出を感じるらしい。

カニ食べ放題に大満足

北海道ならではのカニ食べ放題に大満足!

 

さて、日本では食べ放題のことをバイキングと呼ぶことが多い。しかし、タイではビッフェと呼ぶのが普通だ。そして、タイ人はこのビッフェが大好きなのだ。タイにおける日本食ブームの火付け役になった『オイシイ・レストラン』。その勝因もビッフェ形式にある。それまで敷居の高かった日本料理が定額で、食べたいだけ食べられる、タイではじめてのビッフェ形式の日本食レストランが『オイシイ・レストラン』だったのだ。

今では日本食だけでなく、いろいろなビッフェ形式のレストランがタイには軒を連ねている。タイ人が大好きなタイスキのビッフェといえば『ホット・ポット』というチェーン店だ。タイスキだけでなく、天ぷらや寿司、刺身、点心なども味わえるのが、この店のポイント。タイスキに日本料理を取り入れているのが人気の秘密のようだ。価格は場所により多少差異はあるが、1人399バーツと手頃である。

他にも焼肉ビッフェの店もスクンビット界隈では繁盛している。こちらはタイ人だけでなく日本人にも人気だ。

ただビッフェ・レストランは食べ放題だが時間制限がある。90分という店が一般的なようだ。そして食べ残した場合ペナルティもある。当たり前と言えば当たり前だが。

タイのビッフェ・レストラン。実は日本人にとっても穴場かもしれない。頼んだものとは違ったものが出てくる。そんな不安もビッフェ・レストランではない。是非、タイに来た際には、タイスキのビッフェを楽しんでみたらどうだろう。

ホット・ポットレストラン

バラエティ豊かな日本料理も楽しめる『ホット・ポット・レストラン』。

焼肉ブッフェレストラン

焼肉ブッフェ・レストラン。「Japanese BBQ」の文字が見えます。

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旧年のニュースを振り返り
新年へ思いはせる

いたる所に設けられた追悼の祭壇

待たぬ月日は経ち易い。2016年もあっという間に過ぎ去ろうとしている。12月28日ぐらいからバンコク都内は人が少なくなって、閑散としてきた。それでも30日まで仕事をしている人も多い。銀行や官庁は12月31日から1月2日まで3日間が休み。3日からは通常通りになるので、日本の正月とはちょっと違った感じだ。

そしてタイの大晦日といえば、カウントダウンと新年を祝う打ち上げ花火である。しかし、今年は服喪期間中とあってカウントダウンのイベントは中止になり、王宮前広場からの花火も上がらないという。その代り、ろうそくの灯で新年を祝う「キャンドルナイト・オブ・サイアム」が王宮前広場では執り行われるようだ。ろうそくの灯で迎える新年もなかなか雰囲気があって素敵だと思う。

さて、2016年のタイはどうだったのか?タイの現地新聞が発表する今年の十大ニュースを軸に振り返ってみたいと思う。

1位はプミポン国王の崩御。タイの国民が悲しみに暮れた今年一番のニュースだ。そして2位が皇太子さまの国王即位。12月1日にワチラロンコン皇太子がチャックリー王朝の10代目国王に即位されタイに新しい国王が誕生した。3位は新憲法草案が国民投票で承認されたこと。これは現軍事政権を承認するタイ国民の意思表示となった。4位は俳優ポーさんがデング熱で死去したこと。タイでは一般的な病気であるデング熱。そのデング熱が原因で死に至ることもあるという事実に多くのタイ国民が衝撃を受けたようだ。5位はタイ産コメ価格の10年ぶりの低価格。タイ政府が大量の在庫米を抱えていることが原因で、農民の中にはバンコクで米を直販する人も現れた。6位はスクムパン、バンコク知事の罷免。東京都知事だけでなくバンコクの知事も大きな問題を抱えているようだ。7位はリオ五輪でのタイ選手の躍進。前回のオリンピックに比べ金メダルを2つ増やし、メダル獲得数も参加国中57位だった前回から35位と大きく躍進した。8位はポケモンゴーの大流行。日本だけでなくタイでも社会現象化し話題となった。9位は都市鉄道パープルラインの開通。日本企業が受注し製造した都市鉄道がバンコクに登場し歓迎された。これは現地に住む日本人としてもうれしいニュースだった。最後の10位はネット規制法の承認。国民の半数以上が監視対象となり、表現の自由を侵害する法案として賛否両論が巻き起こった。施行は来年の4月だ。

こうして振り返ってみると、イギリスのEU離脱やアメリカ大統領選挙が入っていないのは意外だった。タイ人にとっては、外国のことより、まずは我が国タイのことが一番気になるのだろう。それが普通かもしれない。

さて、来年はどんな一年がタイで待ち受けているのだろうか? 読者の皆様に取って来る2017年が素晴らしい1年になることを祈念致します。

タイの年末ギフト

タイでは恒例の年末ギフト。いろいろなものを詰め合わせて贈ります。

街頭の電飾看板も追悼のメッセージが

街頭の電飾看板でもプミポン国王追悼のメッセージが

ちょっと控えめな今年のツリー

クリスマスツリーにも国王逝去の影響が。例年に比べると装飾が控え目

 

 

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