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華やかな祭り「ロイクラトン」は
今年も悲喜こもごも

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11月5日。本来ならチェンマイへ出張しているはずだった。普段は簡単に取れる航空券が取れない。タイ国際航空もバンコク航空も満席。まさか、そんなはずは・・・・・・と目を疑った。しかし、カレンダーを見てやっと納得がいった。そうか6日は「ロイクラトン」だったか。

ロイクラトンとは陰暦12月の満月の夜に行われるタイの伝統的な行事である。バナナの葉や紙で作ったクラトン(灯籠)を、ロウソクや線香や花で美しく飾り、家の近くを流れる川に流すのが一般的である。しかし、川のない都市部では公園の池などに流す人も居る。日本の精霊流しの様な儀式だ。

元々は農民が今年一年の収穫をもたらしてくれた水の精霊に感謝する為に行っていた儀式である。今年一年の罪や汚れを水に流し、魂を浄めるという意味合いもあるようだ。

チェンマイで行われるロイクラトンは『イーペン祭り』とも呼ばれタイでは有名な祭りである。コムローイという熱気球を揚げるイーペン・サンサーイも同時期に行われ、全国ばかりか海外からも観光客が訪れる。仕事に振り回されてすっかりロイクラトンの事を忘れていたのは本当に情けなかった。タイ人なら絶対にありえないことだ。

何よりロイクラトンはタイ人にとって特別な日である。祭日ではないが、街中が艶めかしくなる。夫婦や恋人同士にとっては愛を確認し合う日でもあるからだ。日本のバレンタイン・デーの様な日なのである。

そんなロマンス溢れる伝統行事も実は良いことばかりではない。「テレビ工場が火災。被害は1億バーツ」「5人水死、花火で3人が負傷」「クラトン98万個回収」 今年のロイクラトンの翌日にはこんなニュースが世間を賑わした。ロイクラトンにつきものコムローイが原因の火災は毎年のように起きている。

今年タイの軍政は空港周辺でのコムローイを禁止する通達を出している。「違反した者は最高刑で死刑に処す」 確かに空港周辺でのコムローイは危険である。航空機の事故が起きれば国際問題にもなりかねない。軍政が規した極刑にはそれなりの危機感があったのだと思う。

水面を流れる優美なクラトン。そして天へ舞い上がるコムローイの幻想的な美しさ。文明と伝統文化の共存は決して難しいことではない。来年は今年の様な悲劇が起きない事を願うばかりである。

 

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中村蒸一 Profile

ph7 タイで日本居酒屋<寅次郎><どんたく 九州酒場>を展開する、なえぎ(タイランド)株式会社代表。 詳しくはこちらをクリック! インタビュー「熱い思いで本物の日本居酒屋をタイに根付かせる!」