携帯電話の番号も
悲喜こもごも

 実は携帯電話の番号を3つ持っている。いま時だと、決して珍しい話じゃないかもしれない。

一つ目の番号は15年以上も使い続けている番号で、081という3桁の数字からはじまる番号だ。この081という番号は、もともと01という元祖携帯電話識別番号だった。しかし、携帯電話の利用者が増え続け、番号が足りなくなり、0と1の間に8を入れることで、タイの携帯電話会社は最初の番号不足危機を解消させたのだ。だから081からはじまる携帯番号を持っている人はスマートフォン以前からの加入者、携帯電話元祖加入者ということになる。ある意味希少価値のある番号かもしれない。今では嘘のような話だが、携帯電話を持つのに多額の加入費用が掛かり、携帯電話自体も高価で贅沢品だった時代の番号なのだ。

 2つ目の番号は日本の携帯電話番号である。タイの携帯電話番号を日本でローミングして使うことも可能ではある。しかし、実際に使うと思いのほか高く思いがけない出費になる場合が多い。そこで2年前より、基本料金が定額980円というMVNO系格安携帯電話会社に加入し、日本の携帯電話番号をもつようにしたのである。日本では何かにつけて携帯電話の番号を聞かれることが多い。日本出張が多い自分にとっては、日本の携帯電話番号はなくてはならない存在なのだ。

 最後の3つ目の番号。これは厄除け、縁起担ぎ、あるいはお守り代わりに持っている番号だ。嫁さんが、普段タイで使っている081からはじまる番号が良い番号でないから、この番号に変えろと言って用意してくれた番号なのである。タイには姓名判断のように、携帯電話番号運勢判断というのがあり、自分にあった携帯電話番号を判断してくれる易者、占い師のような人がいるのだ。また携帯電話番号運勢判断専門の書籍もでているほどである。そんな携帯電話運勢判断に凝り始めた嫁さんによると、私が10年以上も使い続けている番号は非常によくない番号らしいのだ。「思いがけない支出が続き、お金が貯まりにくい。常に金策に追われ、やり繰りに悩まされることになる」なんとも忌まわしい判断ではないか。しかし、そうだからといって簡単に番号を変えるわけにはいかない。何より携帯の番号を変えるだけで、運命が一転するのなら誰も苦労はしないだろうよ。そんな冷めた思いもある。でも、嫁さんの気遣いをむげにするのも忍びない。なので、この3つ目の番号はタブレットにいれることにした。使うのは嫁さんへ連絡を取るときだけ。夫婦の絆を維持するための専用番号。まさに厄除け、縁起担ぎ、そしてお守り代わりの番号なのだ。

携帯電話ショップの店頭でも縁起のいい番号はプレミア価格がついています。

 

なんと、携帯電話の番号の持つ運勢を判断するための書物も存在するのです。

中村蒸一 Profile

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タイで日本居酒屋<寅次郎><どんたく 九州酒場>を展開する、なえぎ(タイランド)株式会社代表。 詳しくはこちらをクリック! インタビュー「熱い思いで本物の日本居酒屋をタイに根付かせる!」