伝統行事に見る
「水に流す人々」

カトンの屋台

飛行機の予約が取れない。11月下旬、チェンマイへ出張しようとコンピュータに向かったが、全く空席がない。一体どうしたことかとカレンダーに目を向けてはじめて気が付いた。「そうか、ロイカトンだったかぁ」。タイ人なら誰も忘れることのない行事を、うかつにも私は忘れていたのだ。

今年は11月25日がロイカトンだった。このロイカトンという行事、日本語に訳すと「灯篭流し」になる。そしてロイカトンの起源はというと、かなり昔、13世紀のスコータイ王朝時代だそうだ。かなり伝統のある行事なのである。

当時の王妃が、川から日々受ける恩恵に対して、川の女神プラメー・コンカへ感謝を捧げるために、バナナの葉でハスの花をかたどった灯篭(カトン)をつくり、川に流した(ロイ)のがロイカトンの始まりだそうだ。

現在も毎年陰暦12月(新暦10~11月)の満月の夜になると、タイ全国各地で、ロイカトンが行われる。

そして、このロイカトンの日には街中にカトンを売る屋台がたつ。色鮮やかに花で飾られたカトンの仕込みと販売は大概、主婦や子供たちのサイドビジネスだ。小さなもので1個40バーツ。豪華なものになると200バーツ以上するものもある。水に流すだけのカトンにいくらのお金を掛けるか? それにも個人個人の思いがあるようだ。

もちろんカトンを自分で手作りすると言う人もいる。うちの会社の女性スタッフはこれまでに買った宝くじのハズレ券でカトンを作って流している。これまでの不運を水に流し、新しい運気を貰おうという心づもりなのだろうか? パン屋に勤める友人はパンでカトンを作って毎年流している。パンの灯篭は魚の餌にもなって一挙両得だと笑う。こういった変わった素材のカトンの登場は5年前くらい前からである。

以前は安価な発砲スチロールがカトンとして使われていた。しかし、ロイカトンの日に大量に川から海へ流される発砲スチロールが環境へ悪影響を与えていると問題になったのだ。タイ政府は天然素材を使ったカトンの使用を国民に呼び掛けた。その呼びかけが功を奏し、近年はバナナの葉や紙など、自然の素材を使ったカトンがほとんどである。これは本当に良い事だと思う。

穢れや不運を灯篭に託して水に流すロイカトン。そういえば、日本でも過去のことをとやかく言わず、すべてなかったことにすることを「水に流す」という。タイと日本、やっぱりどこかで繋がっている気がする。

 

ロイカトンが好きな息子

蒸一さんの息子くんも「ロイカトン」を毎年楽しみにしています。

 

ロイカトンと会社のスタッフ

蒸一さんの会社スタッフのみなさん。一堂に集まってカトンを流しました。

 

中村蒸一 Profile

ph7

タイで日本居酒屋<寅次郎><どんたく 九州酒場>を展開する、なえぎ(タイランド)株式会社代表。 詳しくはこちらをクリック! インタビュー「熱い思いで本物の日本居酒屋をタイに根付かせる!」