古都チェンマイを襲う
煙害の正体

チェンマイのお寺

気温41℃。チェンマイ国際空港の温度計を見て思わずため息がでた。バンコクの事務所を出る時、車の温度計は34℃だった。まさか北部であるチェンマイがバンコクより暑いとは・・・・・・。

しかし、その暑さより吃驚したのはチェンマイの空気の悪さだった。この時期になると毎年のように発生するタイ北部の煙害。今年は例年以上に酷いようだ。実際、2日間ほど仕事でチェンマイに滞在が、その間、酷いくしゃみと鼻水に悩まされた。また呼吸器系の不快感も若干あった。これはいつものチェンマイと違うな。街中を行き交う人が皆マスクを付けている理由を身を持って理解することになった。

この煙害は10年以上も前からタイ政府を悩ませている。タイ正月であるソンクランの直前になるとタイ北部の農村地帯では広大な規模で焼畑が行われる。これが大規模な山火事へと繋がり、酷い煙害となるのだ。

今年もチェンライ空港ではこの煙害による視界不良が原因で空港閉鎖が数日続いた。健康被害だけでなく、飛行機の発着にまで影響を及ぼしているのである。

そんな事もあって、タイでは焼畑は法律で禁止されている。違反者には罰金1万バーツから10万バーツ、もしくは5年から7年の懲役が科されることになっている。それなのに、なぜ焼畑は減らず、毎年のように煙害は酷くなるのか。それはタイ北部に住む農民のほとんどが焼畑によって農地を元の状態に戻すことができると信じているからだろう。もちろん、焼畑はコストが掛らない。貧困と言う問題も根底にはあるはずだ。

チェンマイと言えば日本人のリタイヤ組が年金ビザでたくさん暮らしている。バンコクに比べて物価が安く、気候が良い。それがチェンマイで暮らす大きな理由だった。しかし、最近ではタイ国全土で最低賃金が引き上げられ、チェンマイの物価が安いとは決して言えなくなった。逆に市場の競争原理が働くバンコクの方が安かったりもする。

そしてこの煙害である。このまま煙害が続けばタイ北部では肺がんになる可能性はバンコクなどの2倍高くなるとのニュースがテレビからは流れてくる。

チェンマイに住むメリット。それに悩み始めたリタイヤ組も少なくない。

バンコクに住む身としては、チェンマイで暮らす人が羨ましかった。しかし今回ばかりはちょっと考えてしまう。

チェンマイ国際空港

中村蒸一 Profile

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タイで日本居酒屋<寅次郎><どんたく 九州酒場>を展開する、なえぎ(タイランド)株式会社代表。 詳しくはこちらをクリック! インタビュー「熱い思いで本物の日本居酒屋をタイに根付かせる!」