雨季のバンコクの風物詩
バラエティ豊かな中秋節の月餅

IMG_6493

今、タイは雨季の真っ最中である。この時期の雨は量がとにかく多い。ひとたび降ると路地が洪水する。夕方の時間帯にそんな雨が降ると、ただでさえ酷い渋滞が、さらに酷くなる。そしてタクシーが捕まらない。普段、車で30分もかからない距離が3時間も掛ったという話もあるぐらいだ。移動は雨が降る前に。これがこの時期のバンコクの鉄則である。

さて、この季節のバンコクの風物詩と言えば月餅である。8月に入るとホテルやレストラン、そしてスーパーなどにこの月餅が登場しはじめる。なかでも『シャングリラ』や『マリオット』『オークラ』といった有名ホテルの特製月餅は毎年のように話題になる。贈答用として根強い人気があるのだ。

そんな高級品があるかと思えば、アイスでできた月餅や飲食チェーン店のオリジナル月餅などもある。なかでも『スターバックス』で売られているお馴染みのロゴが入った月餅はムーンケーキとも呼ばれ西洋人にも人気のようだ。スター(星)のお店がムーン(月)のお菓子を売る遊び心が受けているらしい。

さてこの月餅。もともとは中国のお菓子である。中国では「中秋節」である旧暦の8月15日に月餅を家族で食べたり、親しい人に贈り合ったりする伝統がある。そんな中国の昔ながらの習慣がここタイにも根付いているのだ。面白い事に華僑以外の人でも月餅を贈り合うし、好んで食べる。日本のバレンタインの様な感覚なのだろうか?

私はバンコクに来てはじめてこの月餅の存在を知った。日本では見たことも、食べた事もなかった。だから最初に月餅を食べた時はびっくりした。ちょっと堅めの饅頭だろうと思って口にしたら、中にアヒルの玉子の塩漬けが入っていたのだ。自分が想像していた味とは全く違っていたのである。

そんな事もあって、あんまり月餅が好きじゃない。アヒルの玉子の塩漬けではなく蓮の実の餡子が入った月餅もある。しかし、それでも正直月餅をおいしいと思ったことは一度もない。どちからというと苦手なお菓子だ。中秋節は日本の十五夜さん。日本人としては、やっぱり月見団子である。月を見上げながら家族みんなで頬張ったあの団子の味がどうしても忘れられないのだ。

 

中村蒸一 Profile

ph7

タイで日本居酒屋<寅次郎><どんたく 九州酒場>を展開する、なえぎ(タイランド)株式会社代表。
詳しくはこちらをクリック!

インタビュー「熱い思いで本物の日本居酒屋をタイに根付かせる!」