タイでも食卓の定番
玉子にまつわるあれこれ

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ある程度、保存が効いて、価格が安い。それでいて使い勝手のいい食材。それはやっぱり玉子だろうか。タイでも玉子は食卓の必需品である。そして玉子を使った料理がタイには多い。なかでも私が一番好きな玉子料理といえば『ヤム・カイダーオ』かもしれない。簡単に日本語訳すると「目玉焼きの和えもの」だろうか。
この料理を最初に食べたのはイサーン・ノンカイ県の片田舎だった。今から17年前のことである。私は民間教育援護基金メコン基金の一員としてタイへ来ていた。当時何かと私に世話をしてくれたラチャニー先生は、夕方男性陣がビールを飲み始めると、よく『ヤム・カイダーオ』を作ってくれた。目玉焼きを細切りにした玉葱とタイの香草で甘辛く、そしてマナオ(ライム)で酸味を利かせて和えるだけのお手軽料理である。これが氷を浮かべたタイのビールに良く合うのだ。
何のお肉も入っていない。ただ目玉焼きと身近にある野菜を和えただけ。そんなシンプルな料理だが、マナオの酸味と唐辛子の辛さが微妙に目玉焼きの黄身と融和して何とも言えない味を醸し出してくれるのだ。何も高い食材を使った評判のお店で食べることだけがグルメじゃないと、この時私は悟ったのだった。
さてタイでは鶏の玉子以外に家鴨の玉子も多くのお店で売られている。鶏の玉子は赤茶色、家鴨の玉子は白色なのだ。そして鶏の玉子より家鴨の玉子のほうが値段が高い。そしてピンクに着色された玉子も時に見かける。これはピータンで中華系のタイレストランなどでは店頭に並べてある事も多い。とにかくタイの玉子は色によってしっかりと区別されているのである。日本は白色と赤茶の玉子が鶏の玉子として混在しているがタイは不思議なぐらいきちんと分かれているのだ。
そして、よく冗談で議論される「玉子が先か? 鶏が先か?」のあの話もタイでは鶏が先である。これは誰に聞いても同じなのだ。なぜなら日本語の50音「あいうえお」にあたるタイの「コーカイ」は鶏からはじまって次が玉子なのである。だからなのだ。
タイの玉子事情がわかると、ちょっとばかりタイ語の世界が見えてくるかもしれない。

 

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中村蒸一 Profile

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タイで日本居酒屋<寅次郎><どんたく 九州酒場>を展開する、なえぎ(タイランド)株式会社代表。
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