かつては運河が張り巡らされた
「東洋のヴェネチア」バンコク

バンコク 運河

「天使の都」と言われるバンコクは「水の都」でもある。「東洋のヴェネチア」と呼ぶ人もいる。チャオプラヤ川下流のデルタ地帯にある地の利から、バンコク都内にはその昔、運河が縦横に張り巡らされていた。今の時代と違って車がなく、船で街の中を移動していた時代は、きっと優雅だったに違いない。ヴェネチアの風情がきっとあったのだろう。

都市化が進んだ今では、多くの運河が埋め立てられ道路になった。だからか、バンコクの路地は狭くて入り込んでいる。行き止まりになる路地が多い。それが運河の名残だと知る若い人はそう多くはない。

ただ運河がバンコクから全て消えたかというと実は違う。観光地として有名な水上マーケットは運河の中にあり、今でも庶民の生活を支える市場が設けられている。
また都市部であるスクンビットの路地の奥にも運河がまだひっそりと残っている。プラトナーム桟橋からラムカムヘンの郊外までを結ぶセンセープ運河がそれだ。

このセンセープ運河には乗り合いの水上ボートが庶民の足として活躍している。運河を走る水上ボートは車のように渋滞に巻き込まれる心配がない。朝晩、交通渋滞がひどいバンコクでは迅速に移動できる裏ワザ的な移動手段の一つでもある。

特に伊勢丹のあるセントラルワールドからスクンビット55(トンロー)周辺までの移動にはタクシーに乗るより早く、しかも安く移動できる(料金は距離によって8バーツから18バーツまで)。

ただし、運航時間が平日は午後8時まで、土日は午後7時までと夜中は利用できない。大雨や強風などの天候不良の際はすぐに運休になる。運河の中といえども、ボートは安全第一なのである。

またボートの乗り降りの際は多少の運動神経とバランス感覚も必要かもしれない。運河の水は周辺の生活汚水が流れ込んでいて、時に異臭を放っている。決して快適な交通手段ではないことも付け加えておく。

でも水上ボートはバンコクの庶民の足だ。ボートに乗って会社や学校に通う。ボートに乗って買物に出かける。東洋のヴェネチアと呼ばれた面影が運河の隅に今でも潜んでいる。バンコクはやっぱり面白い街だと思う。

バンコク タイ

+ 運河に面した家々では、花の鉢を置いたりデコレーションをつけたり、舟客の目を楽しませる試みも

 

中村蒸一 Profile

ph7

タイで日本居酒屋<寅次郎><どんたく 九州酒場>を展開する、なえぎ(タイランド)株式会社代表。
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