バンコク人々にとっての
「おふくろの味」って?

お持ち帰りコーナー

月に一度その日はやって来る。お弁当会。息子が昨年の10月から日本人部のある幼稚園に通い始めた。通常、園での昼食は栄養士さんの献立による給食である。しかし、月に一度だけお弁当を持参して皆で食べる日が設けられているのだ。

タイ人の嫁さんは日本のお弁当という習慣を知らない。弁当を作って持っていた事もない。だからお弁当会の日が来ると父親である私が息子の弁当を作ることになる。職業柄、料理をすることに抵抗はないが、早起きしなければならないのは正直辛い。そして子供は何より偏食で、好き嫌いがあるので困る。

これなら大丈夫だろう。自信満々で持たせた弁当が、ほとんど食べられる事も無く返って来た日はかなりへこむ。普段2本のビールが3本、4本になる日はそんな日だ。

日本では学校や職場に弁当を持って行く習慣がある。しかし、バンコクにすむタイ人には弁当を持って行く習慣はない。お昼は外に買いに出るか、もしくはお店で食べるのが普通である。そもそも、普段の生活でもバンコクでは自炊する人が少ない。自炊するよりも外で食べたり、外で買ってきて家や事務所で食べる方が断然安上がりなのである。しかも調理する時間も手間もかからない。

スーパーには日本と同じようなお総菜コーナーがあって時間帯によっては出来たてのお惣菜を買う事ができる。そして路地中に入ると串焼きやソンタム、鶏のから揚げなど色々な屋台が並ぶ。食べるものを探すのに苦労することがバンコクでは全くない。また普通の食堂でも店頭にお持ち帰り用のコーナーを設けている店が多い。店内の席数は限られている。同じ料理でもお持ち帰りしてもらったほうがお店としては営業効率が良かったりする。だから食堂へ入るとマクドナルドみたいに、ここで食べるのか、それとも持って帰るのか聞かれる場合が多い。

そんな事もあってバンコク市内にあるタイ人向けのアパートには台所が無い。台所を付ける必要がないのだ。その代わりにアパートの1階に食堂があることが多い。内線電話で料理を頼むと部屋まで持ってきてくれる。私が7年間住んだ安アパートもそうだった。最初は、こんな安アパートでルームサービスかよ!とびっくりしたものだ。

バンコクの人にとってお袋の味は、住んだアパートの食堂や行きつけの屋台の味になるのだろうか?

タウンハウスへ引っ越して5年。いまだに昔のアパートへご飯を食べに行く嫁さんを見ると、そう思わざるを得ない。

屋台のお惣菜

街角の惣菜屋には、お昼時になると次から次へと客がやって来ます

スーパーのお総菜コーナー

ズラリと惣菜が並ぶスーパーマーケット。日本と変わらない光景です

タイ料理だけど安い

 

中村蒸一 Profile

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タイで日本居酒屋<寅次郎><どんたく 九州酒場>を展開する、なえぎ(タイランド)株式会社代表。 詳しくはこちらをクリック! インタビュー「熱い思いで本物の日本居酒屋をタイに根付かせる!」