日本でもそうだった記憶がある。百貨店へ行くきっかけや行く楽しみといえば催事じゃないだろうか? 絵画展や地方の特産品フェアなど、趣向凝らした催事はまさに「イベント」である。
ここタイでも事情は同じだ。果たして1年間に何回行われているのか? 正確な回数や予定は分からない。バンコクの日系百貨店、<伊勢丹>では、およそ3か月に1回ぐらいのペースで催事は行われているような気がする。
この伊勢丹での催事を楽しみにしている在タイの日本人は多い。だから、催事の期間中になると「あのフェアに行った?」が挨拶代わりになったりもする。なかでも人気なのが北海道フェアや九州フェアなどといった地方の特産品が海を越えてタイへやって来るフェアだ。
そして、ここ数年は珍味や果物、お土産品だけでなく地方の有名飲食店が実演販売をするコーナーなどもある。日本の本場の味がタイでも気軽に味わえると最近では実演販売を楽しみにしている日本人も多い。
6月27日、土曜日。ちょうどバンコクの<伊勢丹>では九州フェアが行われていた。雨季とは思えない晴天の日の午後、店の従業員と勉強を兼ねてこのフェアへ行ってきた。
催事が行われているのは5階。これは日本でも同じだとおもうが、催事は建物の最上階かその一つ下の階あたりで行われる。業界で「シャワー効果」とか「噴水効果」などと呼ばれる商売の手法だ。催事でたくさんのお客様を最上階に集め、帰りに1階まで店内を歩いてもらい、本来は買う予定のなかったものを買ってもらう。ここが百貨店の催事での儲けどころなのだ。
今回の九州フェアでは鹿児島のラーメン屋である『堂』さんの実演販売が人気を博していた。やはり良い匂いがしてくると食べてみようかと思う。ましてや期間限定。この期間を逃したら次は鹿児島に行って食べなければならない。中には期間中に何度も通うタイ人もいるようだ。日本に行かなくてもバンコクで本場の味が味わえるのだから、通いたくなるのも分かる。ただ価格は日本で食べるよりも高い。ましてやタイの物価を考えるとラーメンといえども高級料理並の価格になる。
ちなみに今回戴いた「極辛味噌チャーシュー麺」は1杯380バーツ。日本円で1370円ほどだった。
フェア会場では辛子明太子や辛子高菜、いか明太子などの辛い珍味系が飛ぶように売れていた。買っているのはタイ人。辛いものが中心とはいえ、九州出身としては、九州の味がタイの人に受け入れられているのは嬉しい。きっと九州へ行きたいと思っているタイ人も大いに違いない。
中村蒸一 Profile
タイで日本居酒屋<寅次郎><どんたく 九州酒場>を展開する、なえぎ(タイランド)株式会社代表。 詳しくはこちらをクリック! インタビュー「熱い思いで本物の日本居酒屋をタイに根付かせる!」