クーデターがタイにもたらすものは
いったい何なのか?

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タイに来てから2度目のクーデターが起きた。戒厳令が出されて3日目。驚きよりも、安堵の思いの方が強かった気がする。結局タイの場合はこうなるのか。とうとう行き着くところまで行き着いたのだな。そう思わせてくれるクーデターだった。

そしてクーデターから6日間続いた午後10時から翌朝5時までの夜間外出禁止令。これは正直、飲食業を営む身には堪えた。当然ながら団体予約のほとんどがキャンセルである。従業員の安全確保の為にも営業時間を短縮して対応するが、現場はやはり混乱した。

4年ほど前のタクシン派デモ制圧の後に出された夜間外出禁止令の時は、外出禁止の必然性があったような気がする。セントラル・ワールド、テレビ局、銀行などに火が放たれ、殺気立った雰囲気が街中に漂っていた。しかし、あの時はクーデターではなかった。

確か非常事態宣言の延長に夜間外出禁止令があった記憶がある。今回のクーデターによる夜間外出禁止令は、あまり危機感を感じない。どことなく緩いかんじがする。外出禁止時間目前に家路を急ぐ人々の顔は明るい。普段より早く自宅へ戻れるのは大人でも嬉しいものなのだろう。

果たして、これからタイの政情はどうなるのか。悪夢は繰り返されるのだろうか。それとも雨降って地固まるの如く好転するのか。こればかりは誰も分からない。

今回のクーデターに対して日本政府は批判的な立場だった。確かに日本の民主主義からしたらタイのクーデターは容認しがたいだろう。しかし、軍政が発した「民主的権利の>表現方法がタイは諸外国とは違う」の言葉は妙に納得させられた。日本の正義が必ずしも世界の正義とは限らない。タイにはタイの民主主義がある。きっとそうなのだと思う。

今回の夜間外出禁止令によって家族の愛と絆が深まったというタイ人の声も聞く。テレビは静止画像。歓楽街へ飲みに行く事も出来ない。原則5人以上の集会も禁止されている。夜間外出禁止令によるベビーブームがきっと起きるぞと冗談を言う人もいる。どんな時も生きることにポジティブでいられる。これこそタイ人気質なのだろうか。

夜間外出禁止令も決して悪いことばかりではないようだ。

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※画像はWebサイト『ニュースクリップ』より転載。

 

中村蒸一 Profile

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タイで日本居酒屋<寅次郎><どんたく 九州酒場>を展開する、なえぎ(タイランド)株式会社代表。
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