朝日新聞といえば天声人語である。大学受験に有利だと聞いて高校生の時はここを欠かさずに読んでいた。その習慣が社会人になった今も抜けきれずにいる。しかし、まんざら悪い事でもない。
先週の天声人語が面白かった。
「『日の沈まず』と形容された大英帝国はなぜできたか。珍説を聞いたことがある。イギリスという国は女性が何とも魅力に乏しいし、料理がまずい。だから男はみんな国の外に出て行ってしまう。それで大英帝国はできたのだと」
天声人語からの引用である。大英帝国の珍説はどうでもよかった。書いてあることが全くタイとは正反対なので思わず噴き出しそうになった。
微笑みの国であるタイは女性が魅力的で美しい。だから世界中から男性が集まってくる。そして料理がおいしいので住みついてしまう人も居るほどだ。
何を隠そう私もその一人である。
タイ人が帝国を築けなかった理由は大英帝国の逆説にある。そう考えるととても愉快だし、説得力があって面白い。
さて、女性はともかくタイ料理は確かにおいしい。タイ料理が大好きだという日本人は多い。日本人の口にもあう。だからタイを定年後のロングスティ先に選ぶ日本人が増えてきている。そんなタイ料理になくてはならないもの。欠かせないものが何かご存じだろうか?
ソンタムやトムヤムクンにも必ずいれるもの。それは味の素である。「ポンチュロット」(化学調味料)という呼び方もあるが、タイ人の多くは「アジノモト」と呼ぶ。それぐらい親しまれているし、タイ料理に使われているのだ。どんな田舎に行っても味の素の小袋がない家庭はない。恐るべし日本の調味料、アジノモトなのである。もちろん最近は化学調味料を控えようという声もチラホラ聞こえてくる。それでもアジノモトは屋台でもレストランでも威勢堂々と鎮座している。
なぜタイ料理が日本人の口に合うのか? 米や麺を食べるという食文化の相似。新鮮な野菜や刺激的な香辛料。しかし、その裏に日本生まれの魔法の調味料の存在があることを忘れてはいけない。
中村蒸一 Profile
タイで日本居酒屋<寅次郎><どんたく 九州酒場>を展開する、なえぎ(タイランド)株式会社代表。
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