タイでは企業の製品名が一般名称として浸透し、通常の会話で使われることが多い。「マ・マー」といえば即席麺、「コフィメイト」とはコーヒークリームパウダー、「メックス」はステープラーのことである。
またタイで「セブン」といえばコンビニエンス・ストアのことを意味する。「ラーン・カイコォーン・プゥート・イシップシー・チュモン(24時間営業のお店)」という言い方ももちろんある。でもテレビや新聞以外ではほとんど使われることがない。日本人がコンビニエンス・ストアを「コンビニ」と呼ぶのと同じ感覚だろうか。
タイでコンビニを意味する「セブン」という言葉。これは言うまでもなく『セブン・イレブン』の「セブン」から来ている。その『セブン・イレブン』をタイで最初に展開したのはタイの大手財閥、チャルーン・ポカパン・グループ. (CPグループ)だ。今年は店舗数が6800店舗を超え、タイでコンビニ業界の首位に立っている。
これを追うのが同じくタイの大手財閥サハ・パタナピブン・グループが展開する『108ショップ』である。その『108ショップ』が今年の3月から新たな展開をはじめた。日本のコンビニ大手、『ローソン』との共同会社『サハローソン』を設立。既存店を『ローソン108』へと改装し、順次『ローソン』ブランドでコンビニの展開を図っている。
『セブン』が圧勝だったタイのコンビニ業界。そこに突如現れた青い看板。店舗内で作るおにぎりや日本の和菓子、おでん、そしてUCCのコーヒー。タイの『ローソン』は日本ブランドで『セブン』を追撃する戦略のようだ。
一方『セブン』は自社ブランドの『セブンセレクト』を拡充。これまで以上にブランド力を高める戦略に出てきている。1993年にタイに進出してきた『ファミリーマート』は、『セブン』の陰に隠れて目立たない存在だった。しかし、『ローソン』の進出を機に新たなテコ入れを図る気配も出てきている。
いよいよタイもコンビニ戦国時代に突入なのか? 日本人としては『ローソン』に期待したい。ただ、おにぎりやおでんがタイ人に支持されるかは微妙な気がする。
中村蒸一 Profile
タイで日本居酒屋<寅次郎><どんたく 九州酒場>を展開する、なえぎ(タイランド)株式会社代表。
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