今年も残すところ1カ月。月並みだが、1年、また1年と歳月の流れる速さに唖然としてしまう。タイには日本のような四季がない。だから尚更そう感じるのかもしれない。そして、この時期になると気になるのが日本の新語、流行語大賞だ。今年一年、日本では何が起きて、何が問題になったのか。それを浮き彫りにしてくれているのが、新語や流行語だったりする。今年も30の言葉が流行語にノミネートされていた。その中で一番衝撃を受けた言葉が、「保育園落ちた日本死ね」という言葉だった。子供を育てながら働かざるを得ない母親の切実な悩み。そして、未だに具体的な子育て支援の対策を打ち出せていない政府や自治体の現状。決して心地良い言葉ではないが、日本の今がこの言葉には凝縮されている。ここタイではありえない言葉だ。
タイにも保育所や幼稚園にあたる公営の施設がある。市町村や区の運営のものや、お寺などの宗教団体、また病院が運営するものなど形態は様々だ。その他にも、民間の幼稚園や外国人向けのインターナショナル校もある。どの施設に通わすかは、両親の判断次第になる。中には幼稚園に通わせず自宅でヘルパーさんを雇い子育てする人もいる。
我が家の息子は私の判断で、日本語教室のある私立のインターナショナル幼稚園に通わせている。ここにはタイ語教室、英語教室、日本語教室の3つの教室があり500人ほどの園児が通っている。ここの幼稚園に決めた理由は日本人の先生たちが非常に熱心なのと環境が良いこと。そして自宅から近く送り迎えがしやすかったからだ。一年の半分が雨季で渋滞が激しいバンコクでは、この送り迎えがしやすいと言うのが非常に重要だったりする。月謝はタイのローカールの園に比べると倍以上だが、日本の普通の保育所並の負担で済むのはタイならではである。
我が家の場合は、母親がタイ人なので2歳半から日本語環境に慣らすために、ここの幼稚園の日本語教室に通わせた。しかし、なかには両親とも日本人なのに、同じ園の英語教室通わせている人もいる。駐在としてバンコクに滞在する人たちだ。いずれ日本に帰れば日本語はいくらでも勉強できる。せっかく海外にいるのだから「幼児期から英語教育を」というのが彼らの考えなのだ。これもありだなと思う。
何はともあれ、ここタイの子育て環境は恵まれていると思う。タイ人であれ、外国人であれ、幼児教育で困ることはない。ありがたいことだと思う。
一方、日本で暮らす外国人の子供たちの場合はどうなのだろう? 余計なお世話かもしれないが、ちょっと心配に思う。「保育所落ちた日本死ね」の言葉が頭をよぎる。
中村蒸一 Profile
タイで日本居酒屋<寅次郎><どんたく 九州酒場>を展開する、なえぎ(タイランド)株式会社代表。 詳しくはこちらをクリック! インタビュー「熱い思いで本物の日本居酒屋をタイに根付かせる!」