新しい年が明けても暑い日が続いていた。例年だと12月と1月は乾期で一番寒くなる時期なのだが・・・・・・。しかし、今週に入って、乾期にはありえない長雨が上がるとタイの気候は急変する。先週まで34℃だった気温が20℃以下まで急に下がったのだ。日本を襲った大寒波に比べれば、それほどの気温ではない。しかし、タイ人にしてみれば堪える寒さだったようだ。街中では夜になると焚火で暖をとる人も見かけた。火事にならなければ良いのだが。余計な心配をしてしまう。実際、地方では乾期の焚火による火災も少なくない。タイ人の場合、火や火事に対する恐怖より、寒さへの恐怖の方が勝るらしい。
さて、日本で寒くなると恋しくなるのは鍋料理だろうか? ここタイでは何だろう? タイスキをはじめ鍋料理は寒くなくても年中食べたくなる。会社のスタッフに聞いてみると、温かい麺類が食べたくなると言う意見が多かった。なるほど。確かに、手軽に温まるには麺類が一番だ。個人的にはベトナム麺が寒い時期には食べたくなる。
タイには色々な麺料理があるが、なかでも、このベトナム麺は結構個性的な麺料理である。タイ語では「クイティアオ・ベトナム」とか「クイジャップ・ユアン」、「ピァーク・セン」と看板に書かれている事が多い。しかし一般的には「クイジャップ」呼ぶことが多い気がする。
このベトナム麺、ルーツはベトナムにあるのだろうが、実はベトナムのフォーとはほぼ別物なのだ。なにせメインの具材はイサーン地方のムーヨーと呼ばれる豚ハムである。これにパクチー、刻みネギ、椎茸、揚げた赤タマネギなどを薬味としてのせてだす店が多い。人によっては玉子を入れる。豚骨と鶏ガラのスープにちょっと、とろみのある麺は日本人にも受ける味だと思う。なにせ唐辛子を自分で入れない限りは辛くない。タイで人気のトムヤム麺と違って辛いのが苦手な人も安心して食べる事ができる麺だ。
ちなみにイサーンのウボンラチャタニ県は、このベトナム麺、クジャップがお土産として一番人気だという。だからウボンラチャタニ県出身の従業員が帰省した後は、賄いでクイジャップが出る事が多い。街中の食堂で食べるクジャップも良いが、賄いのクジャップのほうがやはりおいしく感じる。従業員は「本場の味だから旨いんです」と言う。ベトナム麺の本場はタイのイサーン?
タイのベトナム麺。日本の「中華そば」や「支那そば」みたいな存在なのだろうか。
中村蒸一 Profile
タイで日本居酒屋<寅次郎><どんたく 九州酒場>を展開する、なえぎ(タイランド)株式会社代表。 詳しくはこちらをクリック! インタビュー「熱い思いで本物の日本居酒屋をタイに根付かせる!」