ゴールデンウイークと言えば、年に一度の大連休。小学生の頃はこのゴールデンウイークが待ち遠しかった。学校が休みになるのは、もちろんだが、それ以外にも、ある楽しみがあった。それは近所の駄菓子屋さんで、アイスクリームが買えるようになることだった。故郷である鹿児島ではゴールデンウイークになると再稼働する。初夏のちょっと汗ばむ陽気の中、家族で食べるアイスクリームは子供ながらに至福のおいしさだった記憶がある。今では年中いつでもアイスクリームが買えるが、昔は完全なる季節商品で1本50円が相場だった。
ここタイでもアイスクリームは一年を通して買うことができる。しかも、お店まで行かなくても流しのアイスクリーム売りが路地の中まで売りに来る。『ネスレ』などメーカーのアイスを軽快な音楽を流しながらバイクで売りに来ると、どこからともなく人が集まって来る。
また、昔ながらの手作りのアイスを手押し車で売りに来るアイス屋も健在だ。こちらは1杯10バーツと価格が安いことに加え、もう一つの売りがある。それは”アイスサンド”を注文できることだ。アイスサンドとは名刺サイズのコッペパンにアイスクリームを挟んで食べる東南アジア流のアイスの食べ方だ。タイだけでなく、シンガポールやマレーシアでも見かけたことがある。
最初はパンにアイスクリーム?とビックリしたが、食べてみると絶妙な食感がたまらない。ぼそぼそとしたパンにアイスクリームのしっとりした甘さが口の中でゆっくりと融合していく。子供だけでなく大人も大好きなタイを代表するスイーツの一つかもしれない。
さて、今年に入ってタイのアイスクリーム市場に大きな動きがあった。一つは日本で大人気のアイスバー『ガリガリ君』の現地生産がはじまったことだ。価格は1本20バーツ。現地の相場より若干高いが日本ならではの柚子やピーチといったフレーバーがタイ人の子供たちにも受けている。
そして、万を期してと言う感じで登場したのが『グリコ』のアイスクリーム。こちらも現地生産で、日本でも有名な『パリッテ』は1個40バーツと普通のアイスクリームの倍の価格である。いわゆるプレミアムアイスだが、販売開始当初は売切れが続出。しばらくは1人3個までと販売制限が掛けられていたほどだ。
これまでは『ネスレ』『ウォール』『マグノリア』と欧米系のアイスが主流だったタイ。そこに日系2社が新たに参入してくれたのは日本人としては嬉しいし、期待するところだ。でも、その一方で、昔ながらのアイス売りが消えなきゃ良いなとも思う。アイスサンドはタイにはなくてはならないスイーツなのだ。
中村蒸一 Profile
タイで日本居酒屋<寅次郎><どんたく 九州酒場>を展開する、なえぎ(タイランド)株式会社代表。 詳しくはこちらをクリック! インタビュー「熱い思いで本物の日本居酒屋をタイに根付かせる!」