ソンクランに思う
タイ人は「親水の民」

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4月13日から15日はタイ正月「ソンクラン」だった。チェンマイやパタヤなどの観光地は多くの観光客で賑わうがバンコクは違う。渋滞がない。タクシーが走っていない。スーパーに普段はあるはずの商品がない。とにかくないものばかりなのだ。

それでも普段通りに仕事をしている人もいる。バスもとりあえず走っていた。私もここぞとばかり事務所に籠って仕事をしたのである。

そんなソンクラン初日、13日の午後のことだった。スクンビット界隈ではザーッとかなり激しい雨が降った。これは恵みの雨だ。私はそう思った。雨が降れば、もう水掛けもやらないだろう。

しかし、そんな私の思いというか、期待はまんまと外れたのである。雨が降っているのに無邪気に水掛けを楽しむ人がまだ道路沿いにはわんさかいた。濡れること、濡らすことより水で遊ぶのがタイ人は楽しいのだろう。雨が降ろうが、そんなことはお構いなしなのだ。

1歳半になる息子は一日に3回は水浴びをする。しかも水浴びが大好きなようで、風呂場からは喜々とした歓声が毎回聞こえてくる。「暑い国だから」、そんな理由だけじゃない気がする。

下川裕治氏がある雑誌に寄稿していた。タイの人は親水の人々だと。なるほどと思った。

屋台で働く人たちはスコールが襲ってきても悠然としている。雨に濡れても不愉快な顔をすることはない。それどころか瞳の奥を輝かせながら、ものを片づけはじめる。

雨は、水は、街の汚れを洗い流すだけではない。目の前の淀んだ空気も洗い流してくれている。

そいえばタイ語で「思いやり」の事を「ナム・チャイ」という。直訳すると「水の心」である。

あって当たり前。でもなくては人が生きていけない。そんな水の様な心を「思いやり」という言葉に落としこむタイ人。素敵だと思う。やっぱりタイ人は親水の民なのだ。

雨のバンコク

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中村蒸一 Profile

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タイで日本居酒屋<寅次郎><どんたく 九州酒場>を展開する、なえぎ(タイランド)株式会社代表。
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